最近、よく「Web3.0」ってキーワードをよく耳にしますよね。
我らが日本でも、「新しい資本主義の柱になる」とのことで推し進められる姿勢が見て取れます。
しかし、「Web3.0って何ですか?」と聞かれて明確に答えられる人も多くないのではないでしょうか……。
ということで、できるだけ簡単にまとめてみました!
Webの歴史
まず、「Web3.0」というからには、「Web1.0」や「Web2.0」というのももちろんあります。これはすでに現代で実現しているWebの形態のことなのですね。
Web1.0
Web1.0とは、インターネットを通じて、「情報の発信側と受信側が決まっている」という形態です。いわゆる閲覧するだけのHPですね。
Webではないのですが、テレビのようなものだと解釈するといいかもしれません。基本的にはテレビ局が番組を放映し、視聴者はそれを見るだけですよね。
このように発信側は発信側、受信側は受信側、と立ち位置が固定化されている形態がWeb1.0です。
Web2.0
Web2.0とは、Web1.0の次に登場した形態です。これは情報の発信が一般に開かれ、双方向のコミュニケーションができるようになった状態です。
代表的なのがSNSです。皆さんも触れたことがあるのではないでしょうか。TwitterやInstagramなど、誰もが気軽に情報を発信することも受信することもできますよね。
Web2.0の問題点
Web2.0になりとても便利な世の中になりましたが、完璧というわけではありません。問題点もあります。その問題点というのが、プライバシーの漏洩問題、ユーザーデータの改竄問題です。
この原因は、特定のプラットフォームを運営している企業に個人情報などのユーザーデータが集中することにあります。要するにGoogleやApple、FacebookなどのGAFAが代表例ですね。双方向のコミュニケーションが可能になってはいますが、間にこれらのプラットフォームが挟まっています。そこで個人情報が収集されています。
万一運営のミスやここへのサイバー攻撃があって漏洩すると、一度に大変多くの個人情報が流出・改竄されることになります。例えば、最近ですとLine Payから約13万件の個人情報漏えいがありました。1社のミスで13万件です。
また、Facebookの広告を利用して選挙広告を出し、政治的に利用されたかもしれない、という話もあります。
そして、GAFAのようなプラットフォームが力を持ち過ぎている、という面もあります。
今では政治家の方たちもSNSで発信をすることも少なくありません。政治家たちの発信すら、プラットフォームがコントロールすることができてしまいます。
また、良いか悪いかは別の話として、Youtubeが「コロナワクチンに関する動画に制限をかけた」という事例もありますね。言い換えると、Youtubeを運営しているGoogleがコロナワクチンの扱われ方を事実上ある程度操作できる状況になっているわけです。
Web3.0
Web3.0の目的
上記のWeb2.0の個人情報問題、プラットフォームの強権問題の回答として出てきたのが、Web3.0です。Web3.0は、Web2.0で特定の企業が握っていた権力を分散させることで解決しよう、という方針で作られようとしている新たなWebの形態です。
どうやって実現するの?
何をしたいのかはわかったけど、それをどう実現すればいいのか? と疑問が出てくると思います。そこで登場するのが、「ブロックチェーン」という技術です。耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか。
ブロックチェーンの詳しい解説は別記事に譲りますが、この技術を利用することにより、「改竄困難な形式で匿名でデータを記録でき、かつ複数のコンピュータがそのコピーを所持しているため誰か特定の管理者が勝手に操作できない」ような一種のデータベースを形成することができます。複数のコンピュータでデータベースが構成されているため、「分散型」と呼ばれるのですね。
- 漏洩問題→ブロックチェーンの匿名化で防ごう。
- 改竄問題→ブロックチェーンの改竄不可能な仕組みで防ごう。
- プラットフォーム強すぎ問題→ブロックチェーン上にデータを構築して、サービス提供者が独断で操作できないようにしよう。(わかりやすい例をいうと、YoutubeやTwitterが勝手に特定のアカウントを削除できなくしよう、ということです)
このようにしてブロックチェーンを駆使して解決しよう、という方針なんですね。
Web3.0の例
海外の事例が多いですが、実際にこのWeb3.0の様式に沿ったサービスがすでに誕生しています。(個々の詳しい解説は別記事に譲りますので、ここでは簡単に紹介します)
- 仮想通過(暗号資産):ブロックチェーンを使ってお財布状況や取引履歴を担保した通貨です。通常の貨幣のように国が管理しているものではありません。Web3.0のコンセプトにのっとっていますね。
- DAO(Decentralized Autonomous Organization):既存の株式会社にとって代わるプロジェクト開発形態のようなものです。社長という立場はなくなり、参加者(社員)とコード(プロジェクトのルール)によって方針などが決まります。これもWeb3.0チックですね。
- NFT(non-fungible token):データ(イラストやモデルなど)に「確かに○○さんの物です」という所有権を刻まれたものです。仮想通貨のデジタル資産版ですね。データもまた実物と同じように所有権がはっきりし、無断利用などができなくなります。
- メタバース:「インターネット上に構築される仮想空間」のことです。東京、大阪、北海道、などと並列な概念として、「メタバース空間○○区」のような地域が作られる、という感覚です。どこか特定の会社がこれを提供している形式で行われるとWeb3.0というわけではないのですが、ブロックチェーン上に構成されているものは、その仮想空間上の土地が仮想通貨やNFTのようにデジタル資産になるという状態になります。有名な「The Sandbox」などが事例ですね。
結局、実生活はどう変わるの?
このトピックに関しては多分に憶測が含まれておりますので、参考程度に軽く読み流してください。
一般消費者の目線で言うと、データの売買が活発化するということが挙げられます。NFTのおかげですね。NFT限定の楽曲やイラスト、動画などが出てくることになります(海賊版も出回るかもしれませんがすぐ規制されるでしょうね)。
ビジネスの面で言うと、DAOの登場によりビジネスマンのフリーランス化が加速すると思います。また、クリエイターさんたちには朗報な流れです。先の記述と被りますが、楽曲やイラストなどが勝手にコピーされて使われるということが防ぐことができます。
投資家目線で言うと、投資先にデジタル資産やメタバース空間が追加されることになります。ブロックチェーン上の土地やアートが高値で売れたことはご存知の方も多いでしょう。
まだまだ課題もいっぱい…
このように日常生活にも影響が出てくるであろうWeb3.0への移行ですが、もちろん課題も多々残っています。
技術的課題
ブロックチェーンには、まだいくつかの課題が残っています。
一つは「スケーラビリティ」と呼ばれるものです。その構造上、今のデータベースよりも処理量が多くなってしまい、同時に処理できる取引記録が少なくなってしまいます。また、そのブロックチェーンを構成するマシンや回線のスペックに依存する上、データが増え続けるためさらに処理速度が低下しててしまいます。
二つ目が「ファイナリティ」と呼ばれるものです。これは「決済が確定した状態(以後変更ができない状態)」という意味で、金融機関との間でこじれている問題です。ブロックチェーンでは、例えば仮想通貨が支払われた後に誰かが目で確認するわけではありません。そこでどうするかというと、「時間が経つにつれて(別の取引きが続いてブロックが繋がっていく)につれて、ブロックチェーンの仕組み上、その取引データが以後変更される確率は0%に近い」という考え方で担保しています。しかしこの「確率的に」というところが、大事なお金を預かる金融機関には受け入れられないところなのですね。
三つめが「セキュリティ」の問題です。ブロックチェーンはセキュリティを高める仕組みではあるのですが、それでも完全無欠というわけではなく、いくつか抜け穴が見つかっています。「51%問題」や「秘密鍵流失問題」と呼ばれています(詳しくは別記事に譲ります)。
この他にも課題はいくつかあります。ただこれらに関しては時間が解決してくれるとは思います。技術の発展は目覚ましいですし、一定範囲内なら運用で回避することもできるでしょう。確率という考え方も徐々に受け入れられるようになるかもしれません。
法律的課題
こっちの方が厄介だと思います。正直なところ、どのように決めても何かしらの問題が起こると思います。どのリスクは受け入れて、どのリスクは食い止めるのか、という判断が必要になります。
一つは「国や特定の企業が正当な規制をしづらくなる」という点。これはメリットの裏表ではあるのですが、本来規制するべき事案が上手くコントロールできなくなってしまいます。
二つ目は、「税制の問題」。例えば、DAOで得た収益はどこの国の税制に従うのでしょうか。DAOは中央集権的ではないので、どこの国家にも属していません。そしてこれはどこか単一の国家が勝手に決めることができない問題であるという性質上、かなり整備に時間がかかるだろうと思います。
上で挙げたのはあくまで例の一部です。ちゃんと考え始めるとまだまだ出てくるでしょう。何を捨て何を拾うのかをしっかりと切り分けていくことが必要になり、相当難易度が高い作業になります。これは憶測ですが、技術が運用に先走り、一時期はある種の無法地帯と化すかもしれません。場合によっては、規制がかかりまくり、Web3.0は実現せず、というオチになる可能性すらあるでしょう。
コメント