メタバース、NFTゲームの土地がなぜ高く売れているのか? 買うべき? 経営者視点で考察

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 近年、メタバース上の土地が高額で取引されているという話を耳にしたことがあるのでしょうか? 例えば一番の有名どころでは、The SandboxというNFTゲームの仮想土地が100億越えの価格で取引されたという件があります。このように、メタバースという領域に対して大きな期待が寄せられています。お金に余裕のある方は、「自分も土地を買ってみようかな」と思うかもしれません。また、「メタバースの土地を主眼に置いたビジネスをしてみようかな」と考える方もいるかもしれません。そんなときに、ぜひともこの記事をお読みいただけると幸いです。

高値で売れている理由は?

 上記のように実際高値で売れている事例がありますよね。これはどうしてかという理由を一言でいうと、「金が有り余って仕方ない富豪の新技術への投資という名目の散財」です。
 もちろん、金持ちの道楽、というのは単純化しすぎているところはあります。ちゃんとした背景はあります。それは「メタバース上の土地を保有することで、その投資資金の回収・それ以上の集金ができるのではないか」という仮説です。

 例えば、件のThe Sandbox。このゲームでは土地の中でプレイヤーが独自をゲームを作成することができ、そのゲームで他の人たちが遊んでくれるとお金が入ってくる仕組みになっています。要するにその土地を購入した人は、「その土地を持っていて他の人に貸し出せば、その人がゲームを作って遊んでもらって稼げるだろうから、そこから土地代を取っていけば資金を回収できるだろう」と考えているということです。これはThe Sandboxに限らず、多くのNFTゲームにも通じるところで、そのゲームでプレイしてもらえると手数料が入り、収入が発生するわけです。このように、メタバースに限らないですが、土地というのはそれの運用により投資資金以上の回収が見込めると価値が発生するのです。100億回収できるかはかなり怪しいですが……。

 メタバースというのはかなり新興の技術ですし、メタバースのゲームというのはたくさんありますし、これからもどんどん増えていくでしょう。その中で、特定のゲームが「きっとものすごく人気が出て回収できるだろう」という期待を持ち、100億以上の資金をかけて投資するのは、金持ちの道楽といって差し支えないと思います。
 

経営者にもよくある勘違い

 これは(叩き上げでない)経営者にもよくある勘違いなのですが、2022年初期の今現在、メタバース上の土地の価値が一般に認められたためにこのように高額取引されているわけではありません。新興技術への期待、投機、富豪の道楽による一時的な価値上昇です。
 実際にあるケースですが、「とりあえずメタバース上に土地を作って売れば買ってくれる人もいるだろう」と考える経営者もいます。あり得ません。土地を購入する人は土地が欲しいわけではありません。土地の購入者は、その土地の価格、あるいはテナント料を補って余りある集客などの資金獲得が欲しいから購入するのです。実際の土地もそうですよね? 東京など都心は人がたくさんいるから家賃が高く、田舎は人がおらず賑わっていないから家賃が低いのです。

 このように集客できるようなコンテンツがあってこそ、価値ある土地が成立するのです。The SandboxやNFTゲームの場合は、そのゲームというものをコンテンツとして位置づけ、そのコンテンツの魅力によって人が集まってくる、という構図です。そしてそれらですら、今後土地価格ほどの集客を獲得できるかどうかはかなり不透明です。このようなコンテンツや顧客流入を疎かにして設計すらせず、とりあえずメタバースを作ろうとするのは大いに取り違えています。

そもそもVRゲーマーがそれほど多くないという向かい風

 そして、集客といっても、人は無限にいるわけではありません。メタバースの土地を利用する人は、メタバースを利用している人ということになります。VRゴーグルの2021年の累計出荷台数は1000万台付近です(Think’itより引用)。お客さん全体の数は1000万人しかおらず、それを無数の開発会社が取り合っているのです。
 さらに言えば、その中でNFTゲームをやる人は絞られるでしょう。そして何より、2022年初頭の現在のNFTゲーマーは「稼ぐ」ことを目的としたマネーゲームを求める人たちばかりで、消費してくれる人はかなり少なくなるはずです。
 無論、2022年、2023年になればその人口も増えるでしょう。マネーゲームではなく、純粋に楽しみを求め、消費してくれる人も増えてくるでしょう。しかしながら、資金回収は数年以上の単位で見る必要があると思われます。

購入してはいけない、購入したら利益を得られるかもしれない土地の特徴

 上の章を読んでいただけると、購入してはいけない土地がどういうものかわかると思います。

人を呼び寄せるコンテンツを持っていない土地

 要するに、「人を呼び寄せるコンテンツを持っていない土地」です。つまらないNFTゲーム、コンテンツすらないただのデジタル空間。こういったものは購入する価値はありません。どう運用しても土地代の回収ができないでしょう。

土地運用の仕方がイメージできないサービスの土地

 よくあるのですが、ただ公式にステーキングするだけだとよっぽどコンテンツが賑わわないかぎり難しいでしょう。それ以外に、どういうふうに運用すれば魅力的になり、利益に結び付くか、という点が明瞭にイメージできなければいけません。「その土地をどのように運用すれば人が来るか」のイメージです。The Sandboxはある程度クリアしてはいます。「魅力的なゲームを作って遊んでもらえるとお金が入る」。アイデア勝負なのもいいですね。「魅力的である」ことが「その土地でプレイするとお金を稼ぎやすい」などの画一的なものになると、消耗戦が始まります。
 ただステーキングするだけというような土地、どのような土地に飾って運用できるのかがイメージできないサービスの土地、というのは購入を避けるべきでしょう。

要するに、自分が地主・町長になったらどうするか

 蒸気をまとめると、自分が地主・町長になったらどうするか、と考えたときにイメージがつくものが望ましい、とうことになりますね。

今のNFTゲームの土地に関するぶっちゃけ所感

 ここは個人的な感想が多分に含まれているのですが、よろしければ一読ください。
 筆者は、今現在どのような土地も購入する気にはなりません。

 なぜなら、今後多くのNFTゲームが出てくると思うのですが、その他の現行・未来のNFTゲームに勝ち続けて集客できるようなゲームというのが見あたりません。
 これは現在のNFTゲーム開発会社を批難しているわけではなく、そもそもかなり困難なのです。なぜなら、数あるゲームの中で抜きんでて継続的に人気を得続けるようなゲームというのはそうあるものではありません。もちろん中にはあるでしょう。ポケモンとか、マリオとか、そういうごくごく一部の上澄みは存在しますが、自分の着目しているゲームがそうなるかという賭けは決して勝算の高いものではありません。当然、一時的に大ブームが発生してあっという間にプラスに転じたというケースはあるでしょうが、それはもうギャンブルです。
 ここが現実の土地と違うところです。実際の既存の土地は、そこに人が生まれ生活している以上、少なくともその数の集客は見込めます。しかしながら、メタバース上の土地とは、誰もいない無人島を新しく作るようなものです。その無人島にコンテンツを設けて人を呼び寄せる必要があります。そしてその無人島はいくつもあり、世界中の人々がこれからも増やし続けていくのです。高いお金を払ってその土地を買いますか?
 コンテンツがものすごく面白く、「この島の土地をこのように運営していけば人は集まってくるだろう」とイメージできるもの以外は買うべきではないと個人的に思います。

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