近頃話題の「web3」。web3関連のキーワードとして、「NFT」、「仮想通貨」、「メタバース」などが取り上げられていますが、実はビジネスの世界では「DAO」という仕組みもじわじわと頭角を現しています。今後、「DAO」も仮想通貨と同じくらい世の中に浸透していくかも……?
「DAOというワードは聞いたことあるけどなんなのかよくわからない」という方たちのため、今回は「DAO」についてまとめてみました!
DAOとは?
DAOとは「Decentralized Autonomous Organization」(自律分散型組織)の略称です。自立して分散している組織のことです!
……は? ってなりますね。こんな説明で理解できるわけもないので、解説します。
DAOとは新たなプロジェクト運営の組織のことで、株式会社などと並列する概念です。株式会社が組織として事業を行うように、DAOという形態の組織で事業をやっていこう、となっているわけです。
すると、「株式会社とは違うのか?」という問いが出てくると思います。はい、仕組みがかなり違うのです。
DAOの特徴
株式会社とは異なる、DAOの特徴として、下記が挙げられます。
- すべての参加者が対等である
- ガバナンストークンとコードで組織が運営される
- 資金の使い道や契約などの透明性が高い
すべての参加者が対等である
株式会社には権力の階層があります。株主、役員、部長、課長…などの役職が会社にはありますよね。DAOにはそれがないんです。
じゃあどのように意思決定がなされるのかというと、参加者一人一人の提案と、参加者たちの投票によって決定されるのです。組織の資金も、参加者たちの合意がなければ使えません。非常に民主的な仕組みで運営されています。(ここが「分散」型組織とされる点ですね。)
ガバナンストークンとコードで組織が運営される
このDAOの中で重要になるのがガバナンストークンとコードです。
ガバナンストークンとは、その組織で使用する仮想通貨のことです。これを所持していることで、提案や投票を行うことができます。会社で言う株式のようなものですね。DAOのプロジェクトに貢献などすると、貰うことができたりします。
コードとは、そのDAOのルールのようなものです。DAOの初期開発者が合意して保存したスマートコントラクト群のことですね。コードによって、特定の条件が満たされたときに、自動でそれに応じた処理が行われます。どういったときに報酬のトークンが支払われるのか、どのように報酬が分配されるのか、などのルールです。このように自動で決められたコードに基づいて運営されるので、「自立型」と言われているのです。
資金の使い道や契約などの透明性が高い
DAOは一般的にブロックチェーン上で構築されます。ブロックチェーン上にあるということは、すべての取引が記録され公開されるということです。
これは非常に重要なポイントですね。誰もが監視できるので、悪い社長のようにこっそり会社のお金を自分の懐に入れたりということができなくなるのです。
例えばチャリティー組織などがDAOで運営されたりしたら、きっと皆さん安心して募金できるのではないでしょうか。
どうしてDAOが生まれたの?
どうしてわざわざ株式会社とは違う形態であるDAOをわざわざ確率する必要があったのか、今の仕組みのままでいいじゃん、と思う方もいるかもしれません。しかしDAOが生まれたのは民主制を求める時代の自然な流れなのです。
私自身も慣れきって気づいていませんでしたが、今の仕組みは不公正な部分が多々あります。例えば会社の役員などがこっそり会社の費用を自分のために使ったりということもないではありませんし、会社は基本的にスタートアップメンバーのみが美味しい汁を吸ったりなどといったことが起こりがちです。しかし組織の資金の流れは透明であるべきでしょう。また、途中から入った新参者でも、そのプロジェクトに多大な貢献を上げたなら報われるべきでしょう。DAOならばこういったことが実現されるのです。
このような性質のあるDAOは、民主制や公正を重視する現代には非常にマッチした形態であると言えます。
どんなDAOがあるの?
まず、この記事を読んでいらっしゃる皆さまもしっているであろう有名なものも実はDAOで運営されています。
そうです、「ビットコイン」です。
じつはビットコインというのはビットコインというプロジェクトに「マイニング」という形で貢献した方々に配られるガバナンストークンなのです。
ビットコインに限らず、実は一般的な仮想通貨はDAOとして運営されていることが多いです。「イーサリアム」などもそうですね。
また、最近少しずつ知れ渡ってきた、「DeFi(分散型金融)」もDAOで運営されています。Defiの詳しい解説は別記事に譲りますが、仮想通貨の金融機関のようなものです。
他にも色々なプロジェクトが日々DAOとして立ち上がっています。仮想通貨やNFT、メタバースの影に隠れてはいますが、知る人ぞ知る熱い分野なのです。
DAOの将来
DAOはこれからも多く立ち上がっていくでしょう。実際、ビットコインなど上手く運営されている実例もありますし、日本でも広まっていくのではないでしょうか。
これは筆者の予想ですが、様々なDAOを渡り歩いて各DAOに貢献してトークンをもらって稼いでいく、といったような、フリーランスのような働き方に使われて行くと思いますね。
しかしDAOが株式会社にとって代わるかと言われると、そんなことはないと思います。やはりしばらくの間は株式会社がメインで、DAOで働くの人は少し珍しい、といった状態が続くのではないでしょうか。DAOでやっていけるのはかなり能動的に提案をかけ、それを実行するスキルのある一部の優秀な人だけ、といった形になるのではないかなといった印象です。
上にも記載しましたが、チャリティー組織などには是非DAOが浸透してほしいですね。
DAOの課題
しかしやはりDAOにも色々と課題はあります。
意思決定・問題解決のスピードが遅い
これは、まあ、本質的な問題で結構解決は難しいと思います。民主的であることとスピーディな意思決定はトレードオフなところがありますからね。ビットコインでは、コインの仕様変更にあたって投票期間を3ヶ月ほど取ったりしています。問題が起こったとき、どう解決するか、というところも合意性なので時間がかかってしまいます。
セキュリティ
実はあるDAOにハッキングが行われ、資金を抜き取られるといった事例が過去にありました。コード(スマートコントラクト)の脆弱性を突かれたのです。こういったセキュリティ面も課題となっています。
結局中央集権化する恐れ
元も子もなくなってしまうのですが、コード次第で結局特定の誰かが強権を握るという事態にもなりえます。ガバナンストークンを大量に保持している人物がいたとしたら、要するにその人が筆頭株主のようなポジションになってしまうのです。ここら辺はコードを慎重に設計しないといけませんね。
法律
はい、でました。新技術が出てくると決まって発生する法律問題です。一応国によってはDAO法のようなものはあるのですが、まったく追いついていません。アメリカでは法人としてDAOが認められたり、何とかしようと頑張ってはいるのですが、まあ技術の発展の方が速いので仕方ないですね。
一応今は、DAOと銘打っていても実質的には特定の法人なりが主体となって運営しているというケースが多いので何とかなっていますが、本来のDAO(拠点が存在せず分散している状態)が確立されたときに税制などがどうなるのか、などはまったく未定です。
果たしてどうなるのか、筆者も正直読めないところです。
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