Web3・DAOで、生活や働き方はどう変わる? ふわっとしたイメージでなく具体的に解説します

DAO

 昨今、Web3というワードを耳にすることが多くなってきたかと思います。しかしながら、Web3という要素によって、自分たちの生活や仕事がどう変わるのかを明瞭にイメージできる方はそれほど多くないのではないでしょうか。
 Web3と言われてもなんだか漠然としたイメージしか湧かない……という方向けに、本記事を投稿します。
 Web3を構成する要素はいくつかあるのですが、その中の一つ、DAOが特に実生活や働き方に影響していくと思われるので、今回はDAOについて深堀りしていきます。DAOの基本知識に関しては、別記事にまとめてありますので、よろしければ本記事の前にご覧ください。

Web2サービスとWeb3サービスの違い

 Web3界隈では、「既存のWeb2.0サービスはやがてWeb3サービスに置き換わっていくだろう」と言われています。
 Web2.0サービスとは、YoutubeやFacebookのように、特定の会社が管理しているサービスのことですね。2022年初頭現在に皆さんが利用しているサービスはほぼすべてWeb2.0サービスになります。Web3サービスとは特定の会社ではなくDAOによって運営されているサービスのことです。
 完全に置き換わるのか、共存するのかは諸説ありますが、そこは置いておいて、Web2.0サービスとWeb3サービスはどう違うのか、という点を簡単にまとめると下記のようになります。

  • Web3サービスでは管理者がいなくなり、特定の誰かの一存で何かが決まるわけではなくなる。
    要するに、プラットフォーマーが個人情報を独占したり、恣意的にアカウント停止などができなくなるということです。もちろん無法地帯というわけではなく、ルールはあります。
  • Web3サービスでは運営の方針が民主的な投票で決まる
    一部のトップ層の一存で方針が急激に変わる、といったことができなくなります。
  • 貢献度に応じてあらかじめ決められたルールに基づいて報酬が支払われる
    「めちゃくちゃ組織に貢献しているのに待遇悪い……」といったことがなくなります。

 それでは、これらの点によって、我々の生活はどう変わっていくのでしょうか?

消費者にとってのWeb3サービス

 消費者としての大きな違いは、サービスを利用することで「報酬が得られる場合がある」というところです。今でも「P2E (Play to Earn)」など、ゲームを遊んでお金をもらえるという仕組みができ始めています(詳細は別記事にて)。これまではお金を払ってサービスを使っていたものが、逆にお金をもらえることもあるのですね。これはDAO的な観点では、「サービスを利用する」→「そのサービスの盛り上げに貢献している」と見ることができます。
 もちろんお金がどこかから湧いて出てくるわけではないので、その分誰かがお金を出しています。そのサービスをより楽しみたいならやはりお金を払う必要も出てくるかもしれません。そういったお金が分配されるということですね。
 「かもしれない」と表現しているのは、ただサービスを利用するだけで分配の対象になるのか、どれほど分配されるのか、というのがサービスの設計によって異なってくるからです。

クリエイターや従業員にとってのWeb3サービス

 web3サービスには「従業員」という立ち位置はなく、正確に言うなら「DAOのメンバー」ということになるのですが、ここでは理解しやすいようあえて、DAOとそのweb3サービスに貢献している人を「従業員」と呼んでいます。
 従業員にとってはweb3サービスの発展は非常に有利に働くこともあるし、不利に働くこともあります。
 有利に働くケースは、そのDAOのルールに基づき、自分の成果が特定の誰かからの恣意的な評価に寄らずに認められ、その分の報酬が分配されます。これまでの普通の会社では、特定の誰かが成果を発揮しても、それによる利益はまず会社が取り、その残りを従業員に分配していました。ここでは、その会社が持って行くお金が削減され(ルールにも寄りますが)、貢献したメンバーへの分配量が多くなります。この分配ルールに不満があれば、別のDAOに移ればいいだけです(DAOの脱退・参加は非常に容易です)。
 もっとも、このことは裏を返せば、「成果を上げられなければほとんど分配されない」ということを意味します。これが不利に働く点ですね。「お茶汲み」や「窓際」では、収入がこれまでよりも少なくなってしまうのです。

 コンテンツクリエイターには有利な要素が増えます。ここで言っているクリエイターとは、例えばYoutubeに動画を投稿している方たちのことですね。これまでは、クリエイターの収益やルールは、運営会社が勝手に決めていました。フォロワー数が○○人で、総再生時間が○○以上で、広告費の○%は自分たちの懐に収めて残りの○%を配布して、といったやり方です。また、「こういったテーマのコンテンツは禁止ね」とか「収益あげないよ」などのルールです。現状みんなが受け入れざるを得ませんが、「いやおかしくね?」とか思いませんか? 「自分で作ったコンテンツだぞ」と。こういったことがなくなるのです。
 自分のコンテンツが受け入れられればフォロワー数とか総再生時間とかは関係ない。もちろんプラットフォームの開発者も貢献しているのだから分配されるべきではあるけれど、その比率は皆の投票で決める。ルールに沿っていれば、勝手にBANされない。
 こういった状況は、クリエイターさんたちには非常に望ましいものだと思います。そしてそれが実現できるのがweb3サービスなわけですね。

経営者にとってのWeb3サービス

 web3サービスの発展というものは、正直に言ってしまうと、「他の人に働いてもらって仕組みを作った後は、楽に継続的にお金懐に入れていきたいな~」という考えの経営者にとっては不利に働きます(べつにこの考えを否定するわけではありません。自動でお金を生み出す仕組みを作るのは大変なことですし、それをするのは理にかなったことですから。しかしweb3サービス時代には通用しないかもしれない、という話です)。
 これまでの、「利益の○%は社内留保や投資に回して、役員報酬これくらいとって、残りを従業員に分配して~」といったようなやり方ができなくなるのです。なぜならそのルールは民主的に決まってしまうのですから。そもそも、勝手にルールを作る権限など持っていないのです。経営者などという立場はDAOにはおりません。「トークンを少し多めに持っているただの人」にすぎません。そしてDAOへの貢献を怠れば、それ以上トークンをもらうことができません。これまでのように、一部のスタートアップメンバーのみが独占的に利益を享受するというのが仕組み的にできなくなるのです。

 こうなると、「じゃあweb3サービスなんて作らずに今までのweb2.0サービスでいいじゃん」と思うかもしれません。「自分が安定的に高い利益を得続ける」という観点に立てば、できることならそうした方がいいでしょう。
 しかしそうも言ってられなくなるだろう、というのがweb3界隈での見方です。他の組織が従業員や消費者への還元率の高いweb3サービスを続々と開発していくと、web2.0サービスでは誰も働いてくれなくなるし、利用もしてくれなくなる、という事態になります。こういった事情で、web2.0サービスに留まりたくともweb3サービスに移行せざるを得なくなるのです。
 この流れは、意地悪な言い方をすると、これまでの搾取構造へのカウンターパンチなのです。

国家や公的自治体にとってのWeb3サービス

 もしも行政にweb3の考え方が取り入れられたら、DAO的な自治体ができるとしたら、という話をします。ここは正直不透明で何とも言えない、というのが正直なところですが、国家や自治体にとってもweb3時代というのは不利に働くでしょう。これまで、「誰かの一存でルールを決められない」ことを良いことのように書いて来ましたが、当然悪いところもあります。言い換えると、「全体の流れを誰もコントロールできない」ということになるのです。
 そして難しい問題が起これば起こるほど、衆愚政治になる可能性が高まります。組織の方針は投票で決まる。もしも投票権のある人たちの過半数が、問題の本質を掴めていなかったら……。怒られるかもしれませんが、筆者自身も含めて、人間の過半数は優れた先見の明や判断力を持ちません。重大な問題になればなるほど、一部の優秀な人間に任せた方がいいこともあります。ここをどう設計するか、というのはとても難しい問題ですが、国家や公的自治体が仮にweb3を取り入れるとしたら必ず直面するものになります。
 まあ、おそらく行政に関してはこれまでどおりweb2.0的なやり方が主流のままでしょう。その方がいいと思います。そもそもトークンの多寡によって投票権の数が違う、という仕組みは「法の下の平等」に衝突しますしね。「平等」ってなんだろう、というのはまた別の話として。

 

結論:Web3の発展によって私たちの働き方が大きく変わる

 上記を要約すると、以下のようになります。

  • 消費者:サービスの利用料が安くなる。逆にお金がもらえるようになるかも
  • 働き手:成果報酬的な要素が大きくなる
  • 経営者:利益を得にくくなり、戦略が複雑化する
  • 国家や自治体:完全にweb3を取り入れるのは正直非現実的なので、大部分は今まで通りかも?

特に影響がでるのは、働き手や経営者などビジネスに関わる人たちですね。このようなweb3時代への変異は、早くて数年、遅くて10年くらいには起こると思います。時代の流れは非常にスピーディです。現役世代の方たちは、今からweb3時代の働き方について想定しておくべきだと思われます。

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